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ラストシーンが絶品:セッション 感想

セッション(2014年 アメリカ)


映画『セッション』予告編

スタッフ

監督・脚本:デミアン・チャゼル

音楽 ジャスティン・ハーウィッツ

編集 トム・クロス(アカデミー賞受賞)

キャスト

マイルズ・テラー

J・K・シモンズ(アカデミー賞受賞)

 

あらすじ

 世界的ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したニーマンは、伝説の教師と言われるフレッチャーの指導を受けることに。しかし、常に完璧を求めるフレッチャーは容赦ない罵声を浴びせ、レッスンは次第に狂気に満ちていく。 (映画comより引用)

 音楽版フルメタルジャケット

 新入生ながら高名な教授フレッチャーの率いるジャズバンドのドラマーとして迎え入れられた主人公ニーマス。フレッチャーによって優しく温かく迎え入れられたと思ったのも、つかの間恐ろしいスパルタ教育の始まりでした。緊張みなぎるスタジオ内で演奏するのはほんの数小節。それだけで口を極めた罵倒、罵倒アンド罵倒。

 それはまるで新兵を鍛える鬼軍曹。このシーンを見て昔見た「フルメタルジャケット」という映画を思い出しました。その作品でも新兵が鬼軍曹により罵倒され続け最後には新兵が軍曹を射殺することになります。本作もそんな復讐劇になるのでしょうか。

 しかし、その罵倒がニーマンの何かに火をつけました。狂っているとしか形容のしようがない練習を続けるニーマン。ついには自分から誘って付き合い始めた彼女とも音楽の邪魔になるからと冷たく別れを告げます。そこにはフレッチャーに罵倒され涙を流したニーマンは存在せず、傲慢な音楽家の姿があるのでした。

フルメタルジャケット フルメタル・ジャケット 予告編

 

のめりこめる人の狂気

 主人公は練習のし過ぎで手のマメがつぶれて血だらけになりますが、それでも練習を続けます。

 日本のアニメと比べて恐縮ですが、吹奏楽コンクール目指す高校生たちを「響け!ユーフォニアム」という作品があるのですが、その中でも女子高生の主人公が炎天下で練習し過ぎて鼻血を出すシーンがありました。

 何を言いたいかというと、そこまでのめり込めるものがある人は羨ましいなぁと思ったということです。しかし、反面でそこまで自分を追い込むのは最早ある種の狂気を秘めているのではないでしょうか。

 音楽に限らずスポーツでも他の芸術でも成功へ導くものとは、その対象に取り憑かれたような狂気なのかもしれません。

緊張感に満ちたラスト10分間

 極言すれば最後の10分間のためにそれまでの約100分間はあったのではないかと言えるほど、それまでのドラマを凝縮した演奏シーンになっています。ほとんどセリフはありませんが、ニーマンとフレッチャーの演技と演奏が百万のセリフをもってしても語りつくせないような饒舌なやり取りを展開します。細かく書くとネタバレになるのでここまでに留めておきますが、本作は必見です。

 

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