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答え合わせをしてみよう:大世界史 現代を生き抜く最強の教科書

大世界史 現代を生き抜く最強の教科書(池上彰、佐藤優 文春新書)

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)

陳腐化する新書

 本書を二ヶ月ほど前に買ったのですが奥付をよく見たら昨年10月に発行された本でした。新書は長年読まれ続ける本もありますが、旬を過ぎたら中身が陳腐化してしまう本もあります。

 本書はどちらかといえば後者にあたります。(1章と11章は世界史全般について語っているのでちょっと違いますが)ですから、発行から1年も過ぎてしまうと書いてること、時事的な事柄がすでに過去のことになってしまっていたります。

 今回はちょっと意地悪な読み方ですが書いてることの答え合わせをしてみましょう。

答え合わせ

 1.P.30 「アサド政権はもう保たないのではないでしょうか」 ハズレ

 当時はイスラム国がシリア国土の四分の三を支配していましたから、こういう発言になっていると思いますが、その後ロシアが本格的に関与し始めるとイスラム国はジリジリと支配地域を侵食された結果アサド政権は息を吹き返しました。

 2.P.54 トルコのエルドアン大統領は「クーデターを恐れている」 アタリ

 エルドアンが恐れていた通りトルコでは今年7月に軍によるクーデターが発生しました。しかし、数日で鎮圧されエルドアンはさらに怖いもの無し状態になっています。

 3.P.101 「朴大統領の対日姿勢にも、このところ変化が見られますね」 サンカク

 朴大統領は政策的にどうこうよりスキャンダルによって来年には解任(辞任)されそうです。次の大統領が誰になるかわかりませんが、関係改善ができるといいですね。

 4.P.143 トランプが「大統領になる確率はほぼゼロでしょう」 ハズレ

 みなさんご存知の通りトランプが次期大統領になりました。しかしながら、今回の大統領選を明確に予想できた人は多分ほとんどいなかったでしょうから仕方がないかもしれませんね。

 本書の中で予測めいたことを述べている部分のみピックアップして答え合わせをしてみました。この二人のように博覧強記で世界中から情報収集しているような作家、ジャーナリストでも世界情勢を予測することは難しいことなのですね。

他に面白かったところ

 これまではサウジアラビアが中東の覇権を握っていましたが、今後はトルコとイランがそれぞれ牽制しながら担っていくのではないか、歴史的にトルコとイランは中東を支配して帝国を築いた過去があることが大きな理由になるそうです。

 債務危機に陥ったギリシャについて、もともとギリシャはイギリスとロシアが第一次大戦後にオスマン帝国崩壊後、権力の空白地帯になったギリシャに黒海沿岸からギリシャ系住民を連れてきて建国させた国で、当時から第二次大戦後も各国からの支援で成り立っていたとのことです。だから、今になって支援を打ち切られてもギリシャ側としても困るというのが真情とのこと。

 ドイツのメルケル首相が東ドイツ出身でアメリカからは実は信用されていないという話も面白かったですね。

 学生時代の勉強としての歴史は苦手だった人でも本書のような新書なら楽しめるのではないでしょうか。

 

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)