寒い。風景が、奴の目が。:ファーゴ
コーエン兄弟の黒い笑いの傑作。
ファーゴ(1996年 アメリカ)
(amazonプライムで鑑賞)
スタッフ
監督:ジョエル・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
キャスト
ハーブ・プレスネル
ウィリアム・H・メイシー
スティーブ・ブシェーミ
ピーター・ストーメア
フランシス・マクドーマンド
あらすじ
コーエン兄弟が贈る、ブラックユーモアをちりばめた異色のクライム・サスペンス。厚い雪に覆われるミネソタ州ファーゴ。多額の借金を抱える自動車ディーラーのジェリーは、妻ジーンを偽装誘拐して彼女の裕福な父親から身代金をだまし取ろうと企てる。ところが誘拐を請け負った2人の男が警官と目撃者を射殺してしまい、事件は思わぬ方向へ発展していく……。
(以上、映画.comより引用)
予告編
ミネソタの寒々しい風景が醸し出す重苦しい雰囲気がブラックユーモアを引き立てます。
妻を誘拐するという狂言を企むジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は、さもありなんという情けない男。でも、あまりにもあるある過ぎて自分の中にも似たようなところを感じてしまいます。悪党たちや日頃から頭の上がらない義父に強く出られると自分を通すことができず狂言の計画はどんどん違う方向に変わっていってしまいます。最後には警官のマージ(フランシス・マクドーマンド)に強く出られるとついに状況を放り投げて逃走してしまいます。トホホ。
実行犯の小悪党カール(スティーブ・ブシェーミ)も似たようなところがあり
無口の共犯者ゲア(ピーター・ストーメア)にいつも押し切られます。
そのゲアですが、ミネソタの寒々しい風景と彼の生気のない目が殺人を簡単に実行してしまう狂気を体現する存在です。
コーエン兄弟の作品には狂気を体現する存在がよく出てきます。バートン・フィンクのジョン・グッドマン、ノーカントリーのハビエル・バルデムなんかがそうです。
バートン・フィンク
ノーカントリー
一般人の感覚ではまるで理解できないような狂気(あるいは無感情)がその目に宿っており、物語の中で強烈な存在感を発揮しています。
コーエン兄弟はこういったキャラクターが好きなんですかね〜。
物語としては一人の情けない男のセコい犯罪計画が血なまぐさい殺人を引き起こすわけですが、一見退屈ななんでもない普通の生活のシーンと狂気の世界が想像以上に薄い壁でしか仕切られていないことに慄然とさせられる作品でした。
もしまだご覧になっていない方はぜひ一度ご覧になってみてください。面白いですよ。
ブラックユーモアをお好みの方には特にオススメです。
ps
映画冒頭にこの映画は実話を基にしていますと出ますが、これ自体が映画の仕掛けで基になった実話は存在しないそうです。