We are not alone?:地球外生命 われわれは孤独か 感想
地球は奇跡の星か、ありふれた星か そして生命は? (本書帯より)
目次 はじめに 生命は星の一部
第1章 地球生命の限界
第2章 地球生命はどのように生まれ進化したのか
第3章 地球の生命条件が少し変わっていたら
第4章 太陽系の非地球型生命
第5章 系外惑星に知的生命は存在するのか
終わりに われわれは孤独か
たまにはスケールを変えてみよう
僕たちの日常生活はいくつかのスケール中で行われています。移動するなら数キロメートルから数千キロメートル。体重は数十キログラムから百キログラム。消費税の数円単位から家を買う人は数千万円でしょうか。
僕も仕事上なら億単位まで扱うことはあるけど、日常ではそんな巨大な単位はありえないし限られたスケールの中で生きています。
本書のような科学を扱った本を読む面白さは小はミクロン、大は光年まで、そういった日常のスケールから大きくはみ出した世界を体感できることではないでしょうか。普段の生活で小さく凝り固まった脳みそが小さくなったり、大きくなったりすることで揉みほぐされていくような気がしてきます。
過酷な環境で生きる生命
本書は地球外生命を考える上で、生物学と天文学の両面からそれぞれの専門家がそれぞれの分野でアプローチします。
まずはそんな環境で生物などいないだろうという過酷な環境で生きる生命を探ります。
海でも陸上でもなく岩石の中でスローモーに生きる生命(1回の分裂に100〜1000年かかるといいます)。海底火山口の硫酸の中で生きる口も胃腸もないゴカイ。原油の中でも生きるバクテリアなど、こんな過酷な環境でも生きていける生命がいるのなら地球以外の星でも生きていける生命は存在するのではないかと考えてしまいます。
恵まれている地球環境
しかし次に地球がいかに恵まれた環境であることを明らかにしていきます。
太陽との距離が近くても遠くてもハビタントゾーン(生命を宿しうる地域)から外れていたこと。月の大きさが海の潮汐を起こすのに絶妙であったこと。地球の水の量は地球の質量の0.02%に過ぎず(地球は意外に乾いた惑星だった)、陸が海から露出して栄養素(リン)が海中に溶け出し生命が誕生したことが述べられます。
こうなるとやはり地球は特別な奇跡の星だったんだと思わざるを得ません。
惑星でなくてもあり
地球以外の太陽系の星々に生命のいる可能性はあるでしょうか。3章までの極限で生きる生命と生命誕生の条件で各惑星を見ていくとなかなか難しそうなので、巨大惑星(木星、土星)の衛星にターゲットを絞ります。ここでも条件を当てはめていくと、土星の衛星エンケラドスが「液体の水、有機物、熱源という生命に必要と考えられる条件」が揃っているということで期待がかかるのですが、如何せん土星はあまりに遠く未だ生命の存在する証しを立てるには至っていません。
知的生命存在の可能性はある
太陽系には知的生命は我々以外いそうにもないので、太陽系外の惑星(系外惑星)に期待がかかってきています。以前までの望遠鏡による観測では恒星の周りを回る惑星の状況までは観察できなかったのですが、ここ十年ほどで出来上がる予定の最大規模の望遠鏡と飛躍的に発展したコンピュータによる解析技術によれば、それも可能になるとのことです。今後のさらなる研究結果が待たれます。
我々の太陽系のある天の川銀河には地球型の惑星を含んだ恒星系が1000億個もあるそうです。その中の一億分の一に生命があるとしても1000個。その中に知的生命もいるんじゃないかと思うと、なんだか楽しくなりませんか?