ほんわかして、そして悲しいロードムービー:パーフェクトワールド 感想
パーフェクトワールド(1993年 アメリカ)
予告編
パーフェクトワールド A Perfect World 1993
スタッフ
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョン・リー・ハンコック
キャスト
ケヴィン・コスナー クリント・イーストウッド ローラ・ダーン
あらすじ
1963年秋のアメリカ合衆国テキサス州。刑務所から脱獄したテリーとブッチは、逃走途中に民家へ押し入る。彼らは8歳の少年フィリップを人質に逃亡するが、ブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを射殺し、2人で逃避行を続ける。
ブッチを追跡する警察署長のレッドは、少年時代のブッチを少年院に送った元保安官であり、それを契機に常習犯となったブッチに対して責任を感じ、己が手で彼を逮捕しようと思っていた。レッドの捜査には犯罪心理学者のサリーが同行、2人は反発しつつも徐々に打ち解けていく。
一方、宗教的に厳格な母子家庭で育ったフィリップと、彼に対して父親のように接するブッチとの間には友情が芽生えていく。自らの父がかつて1度だけよこしたアラスカからの絵ハガキを大事に携行していたブッチは、フィリップを連れてアラスカ(パーフェクト ワールド)を目指す。 (ウィキペディアより引用)
気持ちの良いロードムービー
アメリカ南部の田舎道を走るブッチとフィリップは脱獄犯と人質なのにすごく楽しそうなんです。 脱獄犯であるブッチの方はともかく、人質の方はなぜ楽しそうなんでしょうか。人質と犯人が長時間一緒にいると連帯感や親近感を抱くという、いわゆるストックホルム症候群というやつなんでしょうか。
僕は違うと感じました。フィリップは母子家庭で育ったため父親からの愛情に飢えていました。また、厳しい信仰による日常生活への不満も持っていました。ブッチは子供時代から劣悪な環境にいたためともかく愛情を受けることだけでなく注ぐことにも不足を抱いていました。二人はお互いが必要としているものを偶然持っていたためこんなに楽しそうに旅を続けることができたのだと思います。
親子間の暴力
ブッチは映画で描かれる間中一切アルコールを口にしません。それは自分の父親がひどい飲んだくれでしかも酔って母親や自分に暴力を振るったことに対して非常な嫌悪感を持っているからでしょう。フィリップ(子供)と一緒ということもあったかもしれませんね。
だから、普通脱獄したらすぐにでも飲みたいであろうアルコールを避けて日本時には馴染みの薄いRCコーラをグビグビ飲んでいたんです。自分が暴力を振るわれたせいか、親が子供に暴力を振るうことには非常に敏感で人が変わってしまうといっても過言ではありません。
フィリップは信仰上の理由で母親からハロウィンもクリスマスもローラーコースターも禁じられています。穏やかに見える母子関係ですがそういった子供の喜ぶであろう物事から遠ざける事は一種の暴力=穏やかな暴力になりはしないでしょうか。
レッド署長の気持ち
少年時代のブッチが犯罪を起こしてしまった時に、あまりにも悪辣な家庭環境だったことから判事にTボーンステーキをおごってより重い罰(少年院行き)を与え更生を願っていたのに、逆に常習犯になってしまった事への署長の気持ちはどうだったでしょう。 拳銃を持った凶悪犯なのにできる限り生け捕りにしようとしたこと、できれば州外に逃げていってほしいと漏らしたことことからその気持ちが察せられます。
職人イーストウッド
変わらぬ堅実な演出でした。
ロードムービーなのでほぼ全編ロケだと思うのですがテキサスの田舎の美しさが十分に表現されています。(テキサスはどこもそんな風景なのかもしれませんが) 堅実な演出とは少し異なるかもしれませんがこの人の映画って人の死を過剰に演出しない傾向(音楽や撮影方法などで妙に盛り上げたりしない)があるのですが、本作をあらためて見てその傾向は20年前の映画からすでにあったのだなと感心した次第です。
20年前の映画ですが物語はケネディ暗殺前夜の時代を描いていいるためか古臭さはほとんど感じません。
ちょっと感動したい時は本作はオススメですよ。ぜひご覧ください。
さて、話は変わりますが僕は本作をAmazonプライム・ビデオで見直しました。プライム会員だと様々な映画やアメリカのテレビドラマが見放題になります。うちの嫁さんは暇があればプライム・ビデオで「ハワイ ファイヴオー」を見ており、すでにシーズン4に突入しております。