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帰ってきたヒトラー 笑えるけど本当は怖い話

帰ってきたヒトラー(ティムール・ヴェルメシュ 上下巻 河出文庫) 感想

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)

ヒトラーが突如、現代に甦った!周囲の人々が彼をヒトラーそっくりの芸人だと思い込んだことから勘違いが勘違いを呼び、本当のコメディアンにさせられていく。その危険な笑いで本国ドイツに賛否両論を巻き起こした問題作。(Amazonより)

 よくある写真に代表されるような演説シーンを思い浮かべたり、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を連想したり、まあいい印象はありませんよね。実際はタバコは吸わないし酒もほとんど飲まないし女性人気を気にかけて結婚もしない、ただひたすら総統としての職務に邁進する真面目な男だったみたいです(世の中何事も真面目だからいいというものではないことのよい証拠ですね)

 本作はそんなヒトラーが1945年4月から2011年8月にタイムスリップしてきたら、どうなるかというある種荒唐無稽な着想から書かれたブラックコメディ小説です。全編がヒトラーの主観を通しているので2011年のドイツが彼にとって如何に狂った世界かシニカルに描かれています。狂人から見たら正常な世界は全て狂っているように見えるのかもしれません。

 でもですね、だんだん惹きこまれていってしまうんですよ。

 だってヒトラーがいちいち現代社会を批評するんですが、これがあんまり間違っていないように感じるんです。随所に今の社会ではタブーになるような危険な思想が垣間見えるんですが、そこを割り引いて考えればいいこと言ってるんですよね。(こんな僕は著者の思う壺にはまってるんだろうなぁ。)読み終わってみると、「ヒトラーいい奴じゃん」とか思ってしまったことが読み終わってみるとなんだか怖くなるそんな小説でした。

 上下巻でそれぞれも分厚いですが面白いのでスルッと読めてしまいます。オススメですよ。

 余談ですが、本作を僕は電子書籍で読んだのですが「著者による原注」と行ったり来たりするのがスムーズにできて読みやすかったです。

 

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)

帰ってきたヒトラー 上下合本版 (河出文庫)