応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱
応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)
著者 呉座勇一
この本は・・・(Amazonより)
室町後期、京都を戦場に繰り広げられた内乱は、なぜあれほど長期化したのか。
気鋭の研究者が戦国乱世の扉を開いた大事件を読み解く。
【目次】
はじめに
第一章 畿内の火薬庫、大和
1 興福寺と大和 / 2 動乱の大和 / 3 経覚の栄光と没落
第二章 応仁の乱への道
1 戦う経覚 / 2 畠山氏の分裂 / 3 諸大名の合従連衡
第三章 大乱勃発
1 クーデターの応酬 / 2 短期決戦戦略の破綻 / 3 戦法の変化
第四章 応仁の乱と興福寺
1 寺務経覚の献身 / 2 越前の状況 / 3 経覚と尋尊 / 4 乱中の遊芸
第五章 衆徒・国民の苦闘
1 中世都市奈良 / 2 大乱の転換点 / 3 古市胤栄の悲劇
第六章 大乱終結
1 厭戦気分の蔓延 / 2 うやむやの終戦 / 3 それからの大和
第七章 乱後の室町幕府
1 幕府政治の再建 / 2 細川政元と山城国一揆 / 3 孤立する将軍 / 4 室町幕府の落日
終章 応仁の乱が残したもの
応仁の乱がベストセラー?
書店の新書売り場に昨年からずーっと平積みされている本がある。Amazonでは未だに新書の歴史モノで20位以内に入っている(2017年12月現在)。
それが今回感想を書いていこうと思う本書「応仁の乱」です。
みなさん応仁の乱というと何を思い出しますか?
家督争い、権力志向、下位身分の下克上。室町時代が終わり戦国時代が始まる契機となったなどなど。
いろいろご意見はあるかと思いますが、共通にそして一番強く心に刻まれているのは「わかりにくい」ということだと思います。
僕らの頭にはテレビや映画で取り上げられることの多い江戸時代のイメージがあって強力な幕府権力の下、きちっとした支配体制があるはずなのに、なんで10年以上も内乱が続くのか理解に苦しみます。
そして登場人物が多いし親子兄弟で戦っているので似た名前が多い。混乱してしまいますよね。
そんなわけのわからないテーマを真正面から取り上げているにも拘らずベストセラーになっているわけを知りたくて、また今度こそ応仁の乱の理解に挑戦するつもりで本書を手に取りました。
読後の感想
本書は同時代に生きた興福寺の2人の高僧(経覚と尋尊)が遺した日記を通じて乱の様子を描いていきます。
日記ですから当然乱のことを筋道たてて説明はしてくれません。僧ら日常見聞きした断片的な事象をこまごまと書き込んだものが集成されているだけです。
しかし、著者の筆力というのでしょうか、それらをもとに巧みに乱の筋立てを整理構成していきます。
僕には高校で習った教科書レベルの知識しかないですが、少しづつ読み進めて行き、なんとか最後のページまで読み終えることができました。
正直に言えば、途中何度か放り出そうと思ったりしたのですが、そうさせない面白さが何かこの本にはあるのかもしれません。
読後の感想としては、やっぱり応仁の乱はわかりにくい、です。
ベストセラーの理由
著者は週刊誌のインタビューで「登場人物がみんな慌てふためいていて格好悪いという、映画『シン・ゴジラ』の前半部分のような話が、英雄の活躍物語よりリアルに感じてもらえたのでしょうか」と答えている。
なるほど、応仁の乱は信長、秀吉、家康の天下統一から江戸幕府成立までの流れのようにひとつの目標に向かって登場人物たちが鎬を削るようなわかりやすさはない。突出した人物がいないので誰の思惑どうりにも事は進まず、ストーリーはグダグダになっていく。
でも、そこには英雄傑物ではない人間が描かれているとも言える。そういうところが本書の魅力になっているかもしれない。
では、本書のよかったところとよくなかったところです。
よかったところ
- 時代背景が懇切丁寧に解説されており乱に至る状況が理解できた(かな?)
- 細川勝元、山名宗全(あるいは足利義政、日野富子)目線の作品はあるけど、興福寺、畠山義就目線で乱を捉えることが新しく感じた
よくなかったところ
- 新書の限界かもしれないが図や表を使ったほうが僕を含む素人にはわかりやすかったかもしれない
新書にしてはちょっと厚めですし内容もここまで述べてきたとおり素人にはとっつきにくいですが、冬休みの課題図書として年末年始のお休みに読んでみてもいいかもしれませんね。