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憲法の無意識 ー 柄谷行人

憲法の無意識 柄谷行人

柄谷行人、とても懐かしい名前だと思った。浅田彰、蓮實重彦とか、ポストモダンとか、構造主義とか…。
僕の二十前後のころ、思想が流行ったんだよね。

NHK教育テレビでYOU(特別思想に特化した番組ではなかったけど)とか見て、内容はあんまり理解できないけど朝日ジャーナルとか読んでました。さすがに現代思想(だっけ?)は読んでない。
確かにあの頃ーバブルの頃は若者たちは思想にかぶれていた。
でも、若者って思想にかぶれるもんですよね?
明治期の学生はデカンショにかぶれ、大正はデモクラシー、戦争中はおくとして戦後はマルクスにかぶれない人はノンポリとバカにされた。その後、左翼が細かいセクトに分かれて潰れていって大学がレジャー設備になった頃には丸っきりノンポリだらけになったと思ったのに80年代にまたもや思想が流行ったのです。

ところで、今は思想を求められているんでしょうか?
バブル崩壊後の経済的に厳しい時代から今まで思想は生き延びて来られたんでしょうか?
若い世代(嫌な言葉w)はコスパ重視のミニマム主義だから哲学は断捨離されちゃったかなぁ。
意識高い系の人とかは哲学好きそうな気がするんだけどなぁ。

さて、本書の内容についてですが、著者が行なった複数の講演を章ごとにまとめたもののため題名の「憲法」にまつわる話は1章と2章にまとめられています。

日本国憲法第九条は「世界史的に異例な条項」であり、なぜ存在し、存在し続けている割には実行されず、実行されないのに残されている。まことに謎であると著者は述べています。それらの謎に対する謎解きが縷々綴られているのですが、僕が仰天したのは憲法の問題を語るのに著者がフロイトを持ってきたことです。過去の憲法学者、政治学者、哲学者の意見を元に憲法を語るのであればまだしも、なぜ心理学者なのか。
その答えは題名にある「無意識」という言葉です。
憲法が護られてきた理由を日本人の心性の根っこにある無意識と結び付けるためにフロイトを持ってくる必要があったのです。

確かに日本の左派の一部には九条教教徒といってもいいような頑強な(頑迷な?)方々もおられるようですが、無意識と結ばれているなら改憲もなかなかに難しいことになっているのも頷ける話です。

また、著者は九条を文字どおりに実行しても(武力を本当に放棄しても)日本の安全は脅かされないかのように述べています。確かに武力を放棄しても国際社会からの非難を恐れて無闇に攻めてくる国はすぐには現れないかもしれません。しかし、僕はそれでは不安です。

この辺りは僕もイマイチ咀嚼できていないところで、「何を言ってるんだ、お前は」と思われた方はぜひ本書を読んでみてください。
頭へのいい刺激になりますよ。

人生100年の時代、老後は認知症防止も兼ねて哲学(思想)にかぶれてみますかね。

 

憲法の無意識 (岩波新書)