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アラフィフのオヤジが読んでくれる人が楽しめる映画、本、音楽などなどをボチボチ切り売りしていきます。

サピエンス全史 ー 通史にはない歴史エッセイの面白さ、ちょっと長いけど

サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 ー

 

国家、貨幣、企業……虚構が他人との協力を可能にし、文明をもたらした! ではその文明は、人類を幸福にしたのだろうか? 現代世界を鋭くえぐる、48カ国で刊行の世界的ベストセラー!

 

  

目次

上巻

第1部 認知革命

 第1章 唯一生き延びた人類種

 第2章 虚構が協力を可能にした

 第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし

 第4章 史上最も危険な種

第2部 農業革命

 第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇

 第6章 神話による社会の拡大

 第7章 書記体系の発明

 第8章 想像上のヒエラルキーと差別

 第9章 統一へ向かう世界

 第10章 最強の征服者 貨幣

 第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

下巻

 第12章 宗教という超人間的秩序

 第13章 歴史の必然と謎めいた征服

第4部 科学革命

 第14章 無知の発見と近代科学の成立

 第15章 科学と帝国の融合

 第16章 拡大するパイという資本主義のマジック

 第17章 産業の推進力

 第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和

 第19章 文明は人間を幸福にしたか

 第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ

あとがきー神になった動物

 

長いけど面白いよ

読後全体を通しての感想は長いw、僕はkindlen電子書籍で購入したので物理的な本の厚さはわかりませんが、結構分厚い本2冊だと思います。

いえそうではなく、中身の感想ですね。

サピエンス(本書では現生人類(私たち)をサピエンスと呼んで他のホモ属と区別をしています)全体の歴史を単純に時系列で語っていくのではなく、上記の目次にも記したようなテーマに沿って1章づつ語っていく、いわば歴史エッセイのような形態をとっています。そのことによって割と固い題材なのですがとても読みやすくなっているような気がしました。

また、著者はユダヤ人なのですが歴史を書くときにユダヤ人にありがちな(と僕が勝手に妄想している)ユダヤ人的な思い込みなく、ホロコーストや歴史におけるユダヤ人の役割に拘泥せず、そういったところは好感が持てました。

 

勉強になった(面白ポイント)ところ

本作品を読んでいくつか勉強になったところをまとめます。

 ・サピエンス(私たち)はネアンデルタール人や他のホモ属と同時代に生息していて、もしかしたら彼らを滅亡させて生き延びたのかもしれないこと

 

 ・定住して農業を行う前の狩猟採集生活は実は食料的にはバラエティに富み栄養バランスの取れた素晴らしい生活だったらしい、ただし安定的に食料が得られないので子供はほとんど死ぬ(乳幼児の死亡率が高い)

 

・サピエンスは様々な動植物の絶滅の上に繁栄を謳歌する種であること。これは近代に入ってからだけではなくサピエンスは全世界に広まっていく先々でどんどん先住していた動植物を絶滅に追いやっていたとのこと

 

・農業ができて狩猟採集生活より豊かな暮らしになったかと思いきや、モノカルチャー(単一種栽培)な栄養的には貧しい生活だった。ただし安定的に食料が手に入るようになり子供は死ななくなった(乳幼児の死亡率の低下)

 

・文字と貨幣、宗教が人間の三大発明(僕はそう読みました)

 

・科学革命(=産業革命)が起こると歴史は加増度を上げて周り出す

 

・人間が幸せかどうかわざわざ幸せとは何かから語り出す。普通、数字を出すにしても上述の乳幼児の死亡率の低下や平均的な食料の消費量、貯蓄高の変動などといったものを出して話は終わりにするところだが、本作では脳の構造までさかのぼって何が脳を化学的に幸福と感じさせているかという話になり、観点が非常に面白いと感じました。

 

・サピエンスは自らを変える、存在のあり方をも変えるかもしれず、今から100年後にこの地球を支配しているのは生物としての人間か、それとも機械化された何者か、またそれとも人工知能なのか?

 

最後に

もうアラフィフなので当たり前なのだが、自分より年下の人がこういう素晴らしい作品を生み出しているかと思うと歳を食ったなぁとあらためて思うのでした。

かなりページ数のある本なので今年のゴールデンウィークの個人的な課題図書にしてみてはいかがでしょうか。