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日本の幻のフロンティア ー 満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書)

満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書)

なぜ満州?

初めて満州という言葉を知ったのは小学校低学年の時に読んでいた「のらくろ」に出てきたか、もう少し後に「マカロニほうれん荘」できんどーさんと熊先生のネタで出てきたか…

最初はただ単に戦中の大陸への侵略行為の一環として、それがあったと思っていたわけですが、色々学ぶにつれ侵略して奪った土地であるということは間違いないのに何かしらいい意味でも悪い意味でも魅力のある土地なんですよね。

満州国自体が、遠い昔からのどうしようもないロシア(ソ連)への恐怖症と石原莞爾の誇大妄想と言っても良いアメリカとの最終戦争論、当時の政府の事なかれ主義が生み出した人工的な国家でした。

アメリカも人工国家なんですけど、旧世界の自然にできた国と違って人工国家っていうのは人の思惑がその構造に露骨に入り乱れていて、読み解いていくと「なるほど、そういう考えでこうなっているのか」ということがわかってきます。その辺りの紐解きが関連書籍を読んでいくことの面白さにつながっていると思います。

また、たかだか15年くらいの間に国の草創から滅亡までが凝縮されているのも興味を引くところでもあります。

本書の内容

こういった歴史を扱う書籍は専門用語が頻出するお堅いものになりがちです。しかしながら本書ではそういった傾向は少なく平易な文章で満州の当時の歴史を語ってくれます。

上から目線の歴史というより横から目線(?)で、当たり前の教科書的な歴史より個別の事象について具体的な論証を行なっています。

例えば、満州事変はあっという間に中国東北部広域を抑えることができたのに、日中戦争(日華事変)では拠点を抑えることしかできず泥沼に落ち込んでいったかを街の作れられ方、民衆と中国軍(国民党軍、共産党軍)との関わりに絞って解説しています。

また、本書の副題にもなっている大豆については、もともと中国国内の肥料用に生産されていたものが、日本に輸出されるようになり、やがては工業用油として遠くはドイツまで輸出されるようになり、大豆の国際商品化が進んでいくところをとても分かりやすく解説しています。

まとめ

学校で習う教科書的には1ページくらいで終わってしまう満州のことも深掘りしていけば大変興味深く面白い題材であることは間違いありません。
しかも、当時の満州で実験的に行われた政策(善悪ありますが)は戦後の日本や韓国でも飛躍的な経済成長を支えることとなります。現在の安倍首相のお祖父さん=岸信介が満州国で活躍していたことは有名な話です。

今後もこの満州というテーマに沿った関連書籍をできるだけ読んでいこうと考えています。

それはそれとして…

本書の著者は安冨歩という東大教授の方なのですが、女装趣味(悪意はありません)がある方なのです。
エピローグに「私が男装をやめてわけ」とあり、そうなるに至ったわけが記されているのですが、本書のメインテーマである満州とあまりにもかけ離れた話題が突然当然登場して僕もびっくりしました。
ご興味のある方は著者名でググって画像をご覧ください。意外に似合ってて二重に驚きますよ。